大前(O):アルバムが出来て率直な感想は?
RYO-G(R):いい経験になったの一言につきます。楽しかったよね。
ILLMARI(I):楽しくはなかったけど。(笑)
R:いろいろ追い詰められてみたりしてね。
O:レコーディングはどのくらい時間をかけたの?
R:プリプロはいってから1ヵ月くらい。
O:早いねー。
R:いや、それまでにデモテープとかを作らせてもらったりしていろいろ時間はあったよね。6月くらいに始めて、7月の終わりに終わったんだよね。
O:RIP Slymeの経歴を教えてくれるかなー?
R:結成したのはちょうど今ごろ(9月)位かなー?
O:RIP Slymeの前にも何かやってたよね?
R:俺とILLMARIと、今日来てないですけどDJ Shigeでいろいろチーム名変わりながらやってたんですけど、それはまあすごく遊びみたいな感じで、PESとShojiが入って今の形になりました。
O:それで一年でレコードデビューでしょ。
R:9月に結成してその年の12月にヤンエム(Young MC's In Town)のコンテストがあって、それ向けて「よっし頑張ろう!」てことで、そしたら勢いよく行ってコンテストで優勝して、それからわりとトントン拍子でMellow(Yellow)のレコーディングに参加させてもらったんです。それがFileの佐藤さんの目にとまって、気に入ってもらったみたいで、レコーディングの話が来て「やらしていただけるならば、やらしてもらいます!」って。
O:レコーディングしてからRIP Slymeって急成長したと思うんだけど。初めにRIP Slymeがレコードを出すって聞いたとき、個人的には「大丈夫かなー?」って思っていたんだけど、前の(8/17)のMassAppealを観たときに以前とは全然違ったもんね。
PES(P):レコーディングの後にまた新しいのを作ったんだけど、なんか自分らでも違うなって思いましたね。
O:やっぱりレコーディングって自信がついた?
R:そうですねー。
B:レコーディングで勉強になったことは?
P:一番勉強になったのはさー、リリックの事とかはあれだけど
R:俺は特にだけど、ちゃんと発音しなきゃっていうのがありましたね。俺はどなって、がなって歌ってたりしたから、そういう事を考えるようになりましたね。ライブとは少し違ったね。
O:リリックってどういうふうに作ってるの?アルバムのは書きためたものもあり、レコーディング用に作ったっていうのもあるの?
R:"Rewind"はレコーディング用に作ったんですけどね。 皆で集まってこういうの書いてきてって3人バラバラに書いてきて、で見せあって、けど大体みんなぎりぎりに書いてくるから、出来たときは「わぉ、いいじゃーん」って思うんですけど、ちょっと経つと駄目だってなるんですよね。(笑)
I:レコーディングが終わってから、詩の書き方も少し変わってきたような気もする。
R:表現豊かに書こうってね。僕達は単純な表現が多いから。
I:俺は気持ち余裕ができたような気がするけどね。なんていうか悩まないで書けるようになってきた。すげー、嫌なもんが出ちゃったからー。
R:毒気が?
I:うーん。そうだね。
R:それまで書き溜めてたのもあるですけど、全部だいたい書き直したんですよ。なんか特にラッパー陣はリリックに集中していましたね。
I:けどPESはレコーディングで録るまで余裕あったよね。俺なんてレコーディング当日まで死にそうになってたもんね。
O:アルバムのプロデュースは一曲Mummy D(Rhymester)で、他はEastEndってライナーに書いてあるけど、、
P:違うんですよ。一曲Mummyさんで一曲Yoggyさんで、あとの三曲は俺なんですよ。
O:SoundっていうところにPESの名前があったからどういう役割なのかなと思ってたけど、そういう事なのかー。Yoggyがやったのってどれ?
P:"Rewind"っていう最後の曲で、トリをお願いしました。
O:二人のプロデューサーはどうだった?
P:もうその曲に関しては全部おまかせって感じでしたね。
R:二人ともはるかレベルの高い所にいると思っていたから、音を持ってきて「カッコいいねー」って、ここをこうしてほしいとかあーしてほしいとかなかった。
P:カッコ良いとしか思わなかったね。
P:最初、Mummyさんの家に遊びに行ったときにSoul Screamを作ってる時のたまっているテープを聴かせてもらって、「これいいっすねー」って言ったら「これソウスク(Soul Scream)で駄目って言われた奴なんだよ」って。それで「もったいないっすねー」って。
I:それが僕らの"About"になった。
P:僕ら用に音を変えて作り直してもらった。
Shoji(S):Yoggyさんは2曲あったんですよ。一曲アルバム未収録曲で。一回しかライブでもやってなくて、それでお蔵入りましたね。見直そうっていう言葉も出てるんだよね。
I:そうだったよね。見直すんでしょ。
P:トラックはすごくそのままで使いたくって、リリック的な問題がいろいろあって。すっぱくって。(笑)
O:PESは前から曲作りはやってたの?
P:そんな前からはやってないです。
R:PESは元々違う音楽とかやってたから、あんまり音楽に対して抵抗がないんですよ。
O:どういうのをやってたの?
R:バンドとか少し。
O:初めからヒップホップしか聴いてませんていうのより、そういう人のほうが音楽に幅があっていいんだよ。
R:みんな、固い頭を持っているから、そういう意味でこいつ(PES)はすっと入って行けてますね。
O:PESっていったら、Free Styleがすごいっていう印象があるんだけど。
P:うれしー!
O:FG Nightで初めてPESを見て、あの小さい奴すごいなーと思ってたんだけどね。この間の"亜熱帯雨林"もすごかったよ。
P:そうっすか。いえーい。
O:ほら結構ああいう所でのFree Styleってなんだかんだいって、みんな持ちネタを混ぜながらやっていて、割合的には半々ぐらいだと思うんだけど、PESの場合ってほとんどFree Styleでやってるよね。
P:意地がありますからね。Kinさん(Mellow Yellow)と俺とBy PharThe DopestっていうグループのKrevaって奴とで、即興なら即興でやろうっていう暗黙のルールをこないだ作ったんですよ。その前からKinさんと二人でどっかに行ったりすると、なにげに持ち歌をやらないように二人で牽制しあってたりしてたんですよ。
O:今の日本のヒップホップシーンについてどう思う?
R:ヒップホップシーンが定着することを信じて、、、。
O:まあ、根付いていることは根付いているけど、まだお金にならないでしょ。
P:俺、すげえそれはサンプリングの問題があると思うんですよね。
O:それってつまりお金が入ってもサンプリング代にお金が消えていっちゃうっていうことでしょ。
P:ですね。
O:そのへんはどう思う?
P:僕らサンプリングで金かかって、自分らの分が無くなるんだったらそれはそれでしょうがないから。
Ben(B):自分達でサンプリングのネタを作るっていうのは?
P:それ、本当にやりたいんですけどね。
B:面白いと思うよ。あまりそういうのやってるのはないから。
O:まあサンプリングはサンプリングでヒップホップマナーなわけだけどね。 けど、やっぱりやるからには売れたほうがいいし、お金が入ったほうがいいよね。
I:けど自分らが完璧になったら別にどうなってもいい。
R:自分らがそれで納得できて、それでお金が入れば文句無いっすね。
O:で改めて、今の日本のヒップホップシーンについてどう思う?
P:まだだと思わない?
R:いや、でもカッコいいのが一杯出てきてるし。
P:ちゃうちゃう、一般的に。やってるほうは増えてるかもしんないけど、リスナーはね。
R:初めてこの前橋とか宇都宮とか地方に行ったんですけど、やっぱりまだねー「セイ、ホー」って言っても「ホー」って返ってこないんですよ。返ってきても半拍後ぐらいですからね。
P:別に教えてたくなかったんですけどね、「ホー」って言ったら「ホー」って言おうよって言わないとね。
R:そういう意味で日本全国区でいうとまだまだなんですよね。
P:East Endとかってすごいと思いますよね。日本全国に行ってコール&レスポンスしてるんだなって。小さいことですげーって思いますね。
O:ようするに東京っていう情報が集まっている所だから成り立ってるものかもしれないしね。それこそFile RecordsのCDが日本全国で買えるかっていうと買えないよね。
P:けど栃木にはありましたよ。(笑)すげー、うれしかったですよ。
S:とりあえずみんなに名前を知ってもらいたいですよね。
R:そうやってライブで知ってもらえればやりやすいですよね。
O:やっぱりRIP Slymeはライブがいいと思うしね。とりあえず11月の全国ツアー頑張ってください。
All:頑張ります。(大前 至)
(DJ Shoji)RIP Slymeのアルバム全体を通して聴いてみると、人に伝わり易いリリックを書いているのがわかる。このアルバムを聴いてそれが伝わるとうれしい。
(DJ Shige)なかなかどうして、かなり面白い内容になったので是非聴いて下さい。
(PES)REALとはこのアルバムのこと。ウソでもなく本当でもない所を攻めているって感じだと思う。聴けばきっと幸せになる。
(ILLMARI)このアルバムは1曲1曲にちゃんとしたメッセージがあるのでそれが伝わってくれればいいなと思います。R.I.P. Slymeは、まぁただの自己紹介ですけど。例えばフェンスなんかはテストの話なのでなんでFENCEなのか。それはテストというのは例えで、何か問題にぶつかった時にどう乗り越えて行くかを書きたかったのです。壁という意味でFENCEな訳で、他の曲にもあるそんなメッセージが分かってもらえればうれしいです。
(RYO-G)アルバムを通して聴いても特にメッセージが強く感じられる曲とか、ここにフロウがある。ここにスキルがあるといったRAPは聴けないのだが、結成して約1年のチームゆえ「まだ未熟」の一言で片付ければそれで終わってしまうので面白かった所も少し挙げておこう。このチームの味として感じることは(特にRAP)身の廻りにある悩みに対し答えるのではなく、悩み自体をRAPしている。つまり答えは「考え中」というところだ。これは頭ごなしに答えを押し付けられるようなRAPとかとは一線を引いて新鮮かもしれない。それの象徴かのような曲「Nai」は結構好き。唯一他のと比べて暗めなトラックはサビの部分で一気に展開し、最後まで聴いているとサビの感情の激しい高鳴りに両の目から熱いモノが頬をつたうのを感じる事の出来る一曲に仕上がっています。他にも好きなのとかありますが、まぁ何にせよ悩み段階の一年生。早くオリジナルな答えを出して作品に反映させることが出来るようにメンバー全員に期待します。