The Legendary Mr.Clifton/SECTORより

今回はラウンジ・ラップだと思う。

この原稿を書いていて、武者震いしている俺がいる。なぜなら、TWIGYの最新アルバム『The Legendary Mr.Clifton』を聴いたリスナーがどんな反応を示すのか、予想できるからだ。間違いなく驚愕するだろう。そして、その“癒し系”とも言える“ラウンジ・ラップ”に恍惚とするはずだ。そして、Twigyの分身であるシンガー=Wiggy Cliftonのファルセット・ボイスに涙するはずだ。とにかくTwigy自身を深く掘り下げたインタビューを読んで、彼の喜怒哀楽を全て感じ取ってほしい。さあ、世界に誇る傑作の誕生の瞬間だ。

―― 今回のアルバムタイトルにもある”Mr.クリフトン”というキーワードからお話して頂けますか?

TWIGY(以下T)「これは結構皮肉っぽいというか…(笑)」

―― 実は僕、コンセプトになったであろう映画「Man on the moon」(ジム・キャリーが主演)を見たんですよ。

T「あ、ホントに。じゃあ、解ってるんだ。そう、「Man on the moon」からもヒントをもらってるんだ。って言うかトニー・クリフトンからヒントを得た。トニー・クリフトンは実在する人物で、彼は表現者として俺と似ているところがあってね。」

―― きっと読者の方には映画を見てもらわなくても、トニー・クリフトンが悪態をつくシンガーであることだけ分かっていれば、きっと理解できるタイトルですよね。

T「そうだね。今回は歌をやってんだけど、歌手としての名前を決めるときに、まずその映画からヒントを得た。それでWIGGY CLIFTONって名付けたんだよね。今回はその人が出てる曲が多いから、タイトルもWIGGY CLIFTONよりのモノにした。で、今回はTWIGYのイメージは極力表に見せない様にしてやろうと思った。」

―― 今までも歌を歌おうと思っていたのですか?

T「いや、無いね。別に歌は好きだけど、自分が歌うとは思わなかった。だって、俺、ラッパーだしね。ただ、WIGGY CLIFTONが歌い出しただけの話だから(笑)。」

―― 今までボウズだったのに髪も伸びて、明らかに大きな変革がありますね。

T「髪を伸ばしたのは6年振りぐらいだね。うっとうしいけど、結構バレないよ(笑)。とりあえず色々と面倒くさくなってさ。本当に目の前に大変なことが色々と重なっちゃってね…。実は(椎名)純平とやった「このまま」を録るまでは最悪のコンディションだった。」

―― そうした状況を抜け出すのにシンガーを迎え入れることは重要でしたか?

T「いや、そんなに深くは考えてなかったけど、シンガーを入れる事によって普通に聴きやすくなる、っていうのはあった。俺はTWIGYとしてのアルバムは、やっぱり俺自身が聴いて面白かったり、心が動かされるのが本物だと思うから、ラップだけにしたら結構つまんないんじゃないかと思ってね。いわゆる“HIP HOP”という言葉が反乱し出して、今頃になって色んな人が出てきて、いわゆるニ○ーの真似をして皆気取ってんだけど、なんかそれじゃあ学校みたいなもので、入り口も制服も分かってんじゃん、みたいな。俺はそういう世界をHIP HOPって言われても信じられなくて…。俺がやってきたことはそういうコトじゃないと思う。そういう部分も見せて、煽ってた部分もあるけど、そんなの真に受けた方がおかしいって言うか(笑)。ラッパーとはこういうものというイメージが作られて、そこの枠に入れらるのが凄い腹立たしい。いつのまにかそこ(回りが作ったHIP HOP像)の生徒にされているというか、そういうこと自体、俺には我慢ならない。だから今回はこういう感じにやってみた。俺にとっては全然普通なことで、ちょっと面白い髪型してみて格好も変えてみたりして、それで別にいいじゃん、って思うね。今のいわゆるHIP HOPを好きなヤツって、俺を見て「頭おかしいんじゃないか」、「あれじゃあオカマみたい」って言うと思うんだけどね。俺も昔Microphone Pagerとかやってる時に見たらひどいことを色々と言ったかもしれない(笑)。それで別にいいと思うしね。」

―― 確かに、僕もライターとして現時点で書く事の意義っていうのが結構薄まりつつある気がしていて、悩んだりもするんですよ。僕がやりたかった事は、誰もやってなかった事を広めたかったってところがあったから。

T「皆、それが好きだから、そこがあるからHIP HOPを好きなんだと思うしね。HIP HOPっていう言葉を自分の物にしようとしてるしね。なんだけど、凄い重みが無くなってるっていうか...。」

―― 今から半年後はTWIGYさんみたいな髪型のヘッズがいっぱい出現するかもしれないですね(笑)。その時はどうしましょ?

T「いや、もう知らない(一同爆笑)」

―― さて、そろそろアルバムの核心に迫りたいと思います。一番気になったのは birdをラッパーして迎え入れている部分でしたね。

T「俺のビートでラップをやってくれたら面白いのが出来ると思って。birdはラップが凄い上手いよ。俺より上手いかも。結構淡々とやるのが上手いね。彼女、関西の人だから歌も関西弁のイントネーションになってるところが面白いよね。俺も関西弁でリリック書けば良かった(笑)。彼女は俺と星座とか誕生日とかも近くて、似てるなっていうのを発見した。本名も同じだったし(笑)。彼女は男女を意識しない様な、中性的な雰囲気が出せるよね」

―― 「とわ」は名曲「DON’T STOP」のカバーですが、これが強烈な味わいですね。

T「これは結構最後の方にできた曲で、WIGGY CLIFTONが調子こいて『なんかもっと歌わせろ!』って言い出したから、『じゃあ、カバーをやろう』って事で(笑)。『でもこの曲はWarren GとかNELLYもやってるよ』って言ったら、『でも好きだから、やりたい』って言うんで、カバーして出来た曲なんだけど(笑)。内容としては結構、気恥ずかしくなるぐらいまともなことを言ってるから、素直に聞いて欲しいです」

―― 一番ビックリした曲が、…というか、いつもTWIGYさんには驚かされっぱなしなのですが(笑)、どのようにしてKeycoとYOU THE ROCK★さんが参加した「FREEDOM」は生まれたのですか?

T「これはアルバム中でも一番最後に出来た曲。実は作る予定に無かったんだけど、なんかはっちゃけた曲が無いと思って、少しバカみたいなお祭り的な曲を作ろうと思った。それで、パーティと言えばYOU THE ROCK★だろうと思って、さらにKeycoは前々から絡んでみたかったから呼んだ。3人で仲良くとりました。これはビデオもあるし」

―― Keycoとは面識があったのですか?

T「いや、全然無い。同じレコード会社だったんだけど絡みはなくて、今回が初めて。凄く彼女は面白いよ。逆に俺が次のKeycoの曲に入るかもしれないし、色々これから展開してくと思う」

―― この「FREEDOM」のトラックを四つ打ち(ハウス)にしようと思ったのは、やはりパーティだから?

T「そう、だから早くしようと思って。これで逆になんか日本語でラップするのって四つ打ちの方がひょっとしたら乗っかり易いのかなって思った。…おっと、あまり分析的な話をするとくだらないからやめとこ…(笑)。まあ単純なビートの方がいいと思って四つ打ちにしたの。イメージ的には地方でのライブでワァーって盛り上がるんだけど、その後のその地元のDJがテクノとかユーロ・ビートとかパラパラとかいわゆる正反対な、その場所によって定着してる曲でみんなが凄く盛り上がっていい顔している感じ?それに俺も乗っかってラップしてるみたいな」

―― これを機会にHIP HOPだけに縛られているリスナーが、色々な音にも興味を持つようになれば面白いですよね。

T「HIP HOPだけに縛られているヤツはこれ、聴かないんじゃないかな。まあ、「これがマイ・ウェイだー!」とかって感じるヤツもいるだろうけど(笑)。でもこれは俺のウェイだから、真似すんな、って感じ(笑)」

―― マイ・ウェイを爆走している人たちの集まりみたいな曲が「T.K.O」ですが。

T「G.K.MARYANとD.OとWIGGY CLIFTONがテクニカル・ノックアウトしてくれる。2曲目の「一等賞」(Q、MACKA-CHIN、D.Oが参加)は5分弱あるから、それに耐え切れたヤツはもっとこっち来い、という曲さ」

―― 「一等賞」でも「T.K.O」でも、D.Oクンが参加していますが、やっぱり彼には相当な魅力を感じているのですか?

T「人間的にも面白いし、ラップしても盛り上げる事ができるし、まともな事も言ってるから。ウチ(えん突つクルー)の新人だしね」

―― 「T.K.O」で倒された後に、「希望」が続きますが、この曲は最高ですね!

T「この「希望」は2001年宇宙の旅を表してる。“希望”って凄くいい言葉だよね。でも、それが良く聴こえなくなるときもあるでしょ。そういう言葉ってたくさんあると思う。“愛”とかだってそうだし…。けど俺はその“希望”っていう言葉が単純に素敵な言葉だと思って、作ってみたいな、と思った」

―― この「希望」はパールハーバーなるギタリストが混沌とした世界観を織り成していて、曲調が半端なくかっこいいですよね。

T「混沌としてるんだけど、綺麗にメロディーラインは作られているし、またちゃんと首を振れる様な仕掛けになってる」

―― アルバムの情報としては69曲目には隠しトラックとして「このまま」のリミックスが入っている点ですね。

T「このアルバムは世の中を表している様なアルバムだと思うんだ。自分の生活の中に溶け込んでくるような。今回はラウンジ・ラップだと思う。とても近い感覚を得られる曲がたくさん入ってるよ。「OUTRO」が終わってからはしばらく余韻に浸ってもらったり、色々とお喋りしてもらったり、寝ちゃってもいいと思うんだ。で、ちょっとしたところで69曲目が始まってまた目が覚める、みたいな仕掛け(笑)。「OUTRO」から69曲目までは色んなイメージを引き起こす空間として考えてもらいたい。

―― さて、このアルバム・タイミングでのライブはどう調理していきましょうか?

T「ライブの調理は内緒で(笑)。まぁ、このアルバムに参加した色んなゲストと一緒に出来る様にして見せたいですけど」

―― TWIGYさんとWIGGY CLIFTONとの絡みはどうしましょう?

T「絡みは分かんない。上手くやるよ(笑)」

3rd Album「The Legendary Mr.Clifton」TOSHIBA-EMI¥2,860-(tax in)2001.10.17 Release

●INTERVIEW/柾虎

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