キングギドラ - TOKYO ROCKIN' Vol.012

記者:先ず最初はHIP-HOPとの出会いからKING GIDDRAの結成までの話を聞かせて下さい。ZEEBRA: もちろん初めは二人とも音楽マニアではあったんだけれど、それは小学校とか中学の初め頃とかで、中学位にブレークダンスとかちょこちょこと流行ってなんかそういうのが日本でも見られるようになってきて・・・。その頃だんだん普通のチャート、例えばビルボードチャートとかに飽きてきて、(HIP-HOPを聴くようになって)やっぱりこれかなと・・・。で、向こうのHIP-HOPもどんどん成長してったから、その中でその勢いとかを全部初めから見て感じてるから、逆にどんどん引き寄せられてくっていうか、そういう感じがありましたね。

K-DUB SHINE: 結成する時っていうのは、お互いに知り合いで音楽好きっていうのも知ってたし、ラップ好きっていうのも知ってたから、何年か会わない時期とかあったんだけど久々に会ったときに、お互い最近「どういうものが好き?」とか「何してんの?」とか話してて、じゃあどうせなら一緒に演らないってことで結成したんですよ。

記者: HIP-HOPの持つパワ−ってもの凄かったけど、自分達に訴えかけてきた部分ってのはどの辺りにあったんだろう?

ZEEBRA: まずやっぱり、曲の作り方とかボーカルの手法とかそういうもの全てが前とは違った訳ですよね、スクラッチしたりとか・・・。どっちかというと何でもありというか、何でもありというのも変だけど、その時代では新しい感じだったし。それと一緒にHIP-HOPに付随するカルチャー、例えばテクノカルチャーなんかも初期には繋がりがあったし。アフリカ・バンバータとかその辺というのはクラフトワークの音使って演ったりとかそういうのが色々あったし。そういう意味でテクノロジーとそれに不良っぽさが加わったって感じで、その辺が俺たちの世代、小学校からファミコンとかゲームウォッチとかで育ってる世代にマッチした。そういうのが結構デカかったかもしれない。HIP-HOPが出てくるまではもっとオタクっぽい感じだったけど、そうじゃなくて当たり前にHIP-HOPを取り入れてる感じが結構面白かった。

記者: K DUB SHINEはオークランドに留学してたそうだけど、やっぱり日本の中で耳でしか入ってこないHIP-HOPを聴いていた訳だから、実際のアメリカのHIP-HOPシーンを目の当たりにして、それに対する驚きの様なものはありました?

K-DUB SHINE: もちろん。正直いってアメリカに行くちょっと前にHIP-HOPを聴き始めたから、 HIP-HOPって音楽よりも、ラップミュージックとして耳に入ってきて、バックグラウンドのカルチャーまでは触れることは出来なかったから・・・。それにHIP-HOPがそこまでデカいものとは気づいてなかったし。アメリカ行ってみて、スクールバスの中で手を叩きながらラップやってるやつとか、カフェテリアのテーブルでラップやってるやつとか見て、「あぁ、こういう背景から(HIP-HOP)が出来てくるんだな」とかそういうことを知ってそれまでの音楽の先入観を覆すような・・、誰にでも出来るし、これもOKあれもOKってものを感じましたね。

記者: その時に感じたことは今の自分達の存在に大きな影響を与えていると考えてもいい?

K-DUB SHINE: 今の自分というか、最初に日本に帰って本格的にグループとしてやってこうっていう時に、向こうで日本語でラップしたのをアメリカのラッパーに聴いてもらって、(詞の)意味はわからないけど彼らの耳にもそんなにおかしいものじゃないし、これはこれでいいとか言われたりして、「じゃあこれなら上手くいくんだな」っていう自信にはつなっがたと思うけど。

記者: HIP-HOPが全世界的に普及し、KING GIDDRA自身もUNIVERSAL MUSIC的な発言をしてますが、そういう意味でも自分達のやってることをもっと世界にまで知らしめたいという欲求はある?

ZEEBRA: ラップに関して言うと、内容的にはコミュニティーというか自分の本当の「回り」、「身の回り」というとちょっと語弊があるけど、例えば向こうで言ったら自分の住んでる環境から繋がっていくことが一番デカいと思うから、日本に住んでるやつが日本の現状をアメリカで言っても別にそれはなんら意味がない事だと思うんですよ。だから俺たちは日本語でやってる訳だし、アメリカのラップをちゃんと聴いて内容を理解すれば納得いくところも勿論いっぱいあると思うけど、全部が全部一緒じゃないし、全部が全部日本の現状とピッタリくる訳じゃないから・・・。だから俺たちもそう思って日本にシーンを作るというか、自分達の本当の言葉が曲となってちゃんとクラブに流れてる、そういう状況が出来た方が当たり前だと思う。ただ、でもトラックとか「音」に関してはまるっきり言葉が無いんで、日本の音が向こうへ出てってもおかしくないし、逆に向こうの音が日本に入ってきてもおかしくないし。例えばMC.ソーラとかフランスのラッパーがアメリカで出したりしてたけど、そういうのはただ単にアメリカでやりましたっていうだけで、それが果たして売れてるかっていうとそうでもないし・・・。こういうものがあるぞって一回見せる分には構わないけど、それで向こうのチャートに常にいるとか、向こうのシーンの中でやるっていうのはちょっと無理があるし。それはもう考えてないです、正直言って。

K-DUB SHINE: ワールドワイドって言っても、自分の基盤をしっかり作らなければ外へで出てっても認められる訳ないし。先ずは自分のことを母国語で言いたいことをしっかり伝えて行きたいと。

記者: 詞の内容に関して言えば、世界に共通するテーマもたくさん入ってくる訳だし、世界にも発信してると考えてもいいんじゃない?

ZEEBRA: 中にはRELATE出来る言葉も絶対入ってくる筈だけど、向こうは日本よりも全然ラップの層って厚いわけじゃないですか、色んなこと言ってるやつがいて。例えば、自分の友達の話をするのは解るけど、そいつの友達の話を自分がするよりそいつがした方がやっぱり納得いくし、色んなこと言えるし。そういう意味では向こうのやつはむこうのやつなりに自分達のフィールドがあって、そこである程度のものが出来てくる訳だから・・。勿論交流は常にとるし世界的な意味で一つの地域に限られない問題は幾らでもあるから、それ話し合ったり、色んな形でコラボレーションするのは大切だと思うけど・・・。

K-DUB SHINE: 後は単純に俺たちが向こうのラッパーのビデオ見たり歌詞聴いたりして、アメリカではああいう状況でラッパー達が頑張ってんだなとか、何かやろうとしてんだなっていうのを俺たちが日本でやれば、例えばアジアの国で日本のように発展してこうと思う国とか、目標にしていこうとする国はアジアに幾らでもあるし。そういう国のやつらが日本のやつらはこういうことやってんだってことに共感してもいいと思うから、それは言葉は解らなくてもヴィジュアルの面とかで伝わればいいんじゃないかな。そういうことはあればあったですごくいいことだと思うけど、とりあえずの俺の目標はもっと目の前の事って感じ。

記者: 現在の日本の音楽シーンの中でもJAPANESE HIP-HOPというものがある意味社会現象的な盛り上がりを見せつつあるけどその辺りはどう捉えてる?

K-DUB SHINE:「やっと気づいたかっ!」とか・・・。

ZEEBRA: 結局、何て言うのかな・・・。俺たちいつも話してるんだけど世代の問題ってのが一番デカイと思うんですよ。例えば今の高校生とかは日本語ラップって初めて聴いた時に、まあRhymester聴いてるかもしれないし俺たち聴いてるかもしれないし・・・。やっぱり洋楽に完璧に洗脳される前に、邦楽のちゃんとしたものが耳に入ってくるようになってるっていうのは大分良いことだと思うし。俺たちは世代がちょっと上だから、逆に間違ったものとか見ちゃって、それに対する固定観念も出来てて。初め俺も日本語ラップは超嫌いだったし。はっきり言って、全然やる気なかったですけど・・・。でもやっぱりHIP HOPのあるべき形としては、幾ら日本で「HIP-HOP、HIP-HOP」って言ってたって、向こうの聴いてそれで盛り上がってるうちはまだまだだってのがあると思うんですよ。だから自分達自身の力で日本のシーンを盛り上げて行きたい。だからアメリカのHIP HOPシーンに「RUN'D'MC」とか「ハマー」が出てきたときに、それに便乗してただの売れせんみたいなものががんがん出てきたじゃないですか。それと同じように今日本でもガンガン売れせんが出てるわけですよ、便乗派がいっぱいいて。でもそれってやっぱり、向こうのチャートもそれだけでは終わらなくて、もっと本当のリアルなものである程度マス・アピールのあるものがどんどん上に出てきて、結局最終的にフェイクなものが消えていって、それがHIP-HOPだけじゃなく他のジャンルにもすごい影響があったと思うんですよ、ニセモノは消えるといったような。日本はまさにその前の状態だから、商業的な意味あいは除いた部分でふるいにかけられて行く時代だと思いますね。

記者: チーム名は「KING GIDDRA」でしょ、「KING GIDDRA」っていうのはやっぱり地上にどっしりと腰を据えて辺りを見回しながら、気に入らないものは片っ端から破壊していくイメージがある。いわゆる破壊者として存在する。今回発売するアルバムのタイトル「空からの力」と「KING GIDDRA」ってちょっと違う感じがしたけど、ちょっと説明してもらえますか。

ZEEBRA: KING GIDDRAは元々金星から来てるんですよ、宇宙怪獣だから。だから「空から降りてきた力」ということ。

K-DUB SHINE: それでまあ、地球を客観的に「空から見た」、「宇宙から見た」地球をKING GIDDRAが地球にやって来て、「お前らこういう風に見えるんだぞ」って教えてやってるような感じなんです。

ZEEBRA: KING GIDDRAは光線吐くけど、それが俺たちの言葉であって、それが当たる所というのは人間の脳の中だったりとか、(俺たちの曲を)聴いた後感覚的に来る訳だから。それぞれの、一人一人のマインドの中を破壊したい。

K-DUB SHINE: 暴力とか武器とかじゃなくて、メンタル的なものを破壊したい。人間の体だって傷ついたらその後強くなるでしょ。そういうとこなんですよ。だから破壊したいのは建設的なものじゃなくて、破壊的なものを破壊したい。

ZEEBRA: 排他的なものを破壊したいとか、そういう感じです。だからそれこそさっきの商業主義とか・・・。確かに世の中お金無きゃ動かないし、ある程度そういうことはしょうがないと思いますよ。だけど(曲とか)作品を売るにあたってそこでもそういうものがルールする世の中とか・・・。

K-DUB SHINE: 優先されるべき人が優先されないとか・・、ただ上から見てる人が一番儲けるとか・・。まあそういう資本主義はしょうがないんだろうけど、もうちょっと上の人が下の人を理解するなり、下の人が上の人をもうちょっと頼れるような・・・。

ZEEBRA: みんな結局悲観的じゃないですか、日本人は取りあえず。だからやっぱり世界に目を向けちゃうし、それはそれで良いと思うけど、でもやっぱり悲観的になってしまう固定観念を破壊したい。それが一番の目的。だから俺たちがやみくもにグイグイやってくのを見てどんなことに関してもやる気出してくれればいいし・・・。

記者: なるほど。で今回のアルバム「空からの力」を聴かせてもらったんだけど、KINGGIDDRAの詞はとても理解しやすいですよね。何を言いたいのか良く解る。たまにライムに凝りすぎたりテクニックに走りすぎて何を言いたいのか解らないものもあるけど、その辺はやっぱり気を使ってる?

ZEEBRA: 気は使ってますね。解りづらいってのは人それぞれ色々と意見があるかもしれないけど、おれはやっぱりさっきの洋楽に対する憧れとかから生まれてきてるものじゃないかと思うんですよ。みんな洋楽聴いてるやつらは内容を理解しないで、勿論全部とは言わないけど、大半が理解しないで聴くことに慣れてる人達でしょ。それは言葉もインストゥルメンタルの一つであって、そういう風なつもりでしか聴いてない訳だから、日本語の場合も解りづらい方が、聴き流し易いしのりやすいって考え方からおそらく出てきてるものだと思うし。結局HIP-HOPというかRAPというものがメッセージを伝えることが大前提だから、伝わらせることが必要不可欠だから、そうするのが当たり前だし、そうしなきゃ意味がない。ただ聞こえ方に関しては工夫はします、それがカッコ悪くならないように。ただ最近は(シーン全体に)変わってきてますね。昔はそういう感じが結構あったけど・・・。現在は意味を伝えていこうという方向に成長してきてる。

記者: 先日テレビオンエア用(11/22NEO HYPER KIDSにてオンエアされた)にKING GIDDRAにもRHYMESTERやMELLOW YELLOWとFREE STYLE RAPPIN'をしてもらったけど、FREE STYLEの面白さっていったいどこにあると思ってます?

ZEEBRA: 取り敢えず、韻を踏むことそれがまず大前提なんですよ。昔は日本のHIP-HOPでもそういうことが無い時もあったけど、実際ラップは「韻を踏む、ライムする」ってことがすごく大切なことだから、それによって言葉の説得力を生んで行くものだから。まあ人それぞれFREE STYLEの仕方はあるかもしれないけども、俺たちは自分達の持ちネタじゃなくて、その時に頭に浮かんだ言葉で韻を踏んで話をしてくっていう、そういうスタイルだから、時間の限られたパズルゲームみたいなもんで、今この小節いってる間に次に韻を踏んで話をつなげることを頭のなかで考えなきゃいけない。そういうちょっとしたゲーム的なところがあって、それが思ったとおり上手くガシッガシッといければ気持ちいいし。聴いてる方もそういう風に考えて聴いてるから、それだけ高等な技を見せれば皆も喜ぶし・・・。

記者: やっぱり他のチームのMCとやる訳だから対抗意識っていうものはでてくるの?

K-DUB SHINE: 一体感とかそういうものもあるし、競争心ってものもでるし、場によるね。

ZEEBRA: だから勿論競争心は俺たちも常に持ってるけれども、それは例えば全く俺たちと同じスタイルとスタンスのやつがいたら競争せざるを得ないけど、逆にHIP-HOPは色んなスタイルがあるものであって、勿論一緒になって競争はするけれども、HIP-HOPの中でこういうスタイルでやってるやつの頭、俺たちは俺たちのスタイルの頭。色々そういうのが居て、それが一ぺんに上がっていくことが大切だと思うから、俺たちだけで上がっていってもしょうがないし。シーン全体が上がって行くことが一番大切だからある程度認めた人間に対してはそういう風にしてますね。

記者: 最後になるけれどKING GIDDRAを形容してしばしば「アンダーグラウンドの帝王」とか言われるけど、自分達の位置づけをどう考えてる?

ZEEBRA: 今は少なくともアンダーグラウンドじゃないですか。それは別に俺たちがオーバーグラウンドになったらアンダーグラウンドを捨てるという意味では全然無く、アンダーグラウンド・地下から大きなパイプを一本作ってしまえと、そんな感じだと思うんですよ。だから常にいる一番下の底辺、結局立てる場所はアンダーグラウンドだし、だけどそれは雲の上にまでつながってるから誰にでも聴くことが出来るし。

K-DUB SHINE: 木の根っこって常にアンダーグラウンドじゃないですか、土の下で。そこに居れればどんなに伸びてったって地は足についてるし・・・。リアルでアンダーグラウンドでハードコア!

KING GIDDRA PROFILE: K DUB SHINE-各務 貢太(MC)/ ZEEBRA-坂倉 英之(MC)/ OASIS-坂上 功(DJ)1993年グル−プ結成。1994年MTVの番組「YO! MTV RAP」の日本レポ−トで、日本のラップ・グル−プとしてインタビュ−を受ける。現在、活動の拠点をオ−クランドと東京に置き、アメリカでは主に、ストリ−ト・レベルのプロモ−ション、地元ア−チスト"THE COUP" "HIEROGLYPHICS"との交流、トラック制作等を行う。1995年にはJUNGLE BASSで、"ED O. G AND DA BULLDOGS" 来日公演のフロントアクトを務めるなどHIP-HOPライブやクラブイベントに積極的に参加。その他、CAVE、R?Hall等のクラブでゲリラ的に行うフリ−スタイルや、定期的な「Fine Night」への参加、プロモ−ション・ビデオの自主制作等、活動の範囲は急速に拡大中。

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