自分が生まれた場所には誇りを持つのは当然だが、よそ者を嫌うのはちょっとマナー違反。そして、この美しくもかぐわしい宇宙を仰ぎ見て考えてみれば、音楽によそ者もロコもいない。つまり、ヒップホップ・アーティストはもうジャンルの壁を壊してやりたいことをやるべきだし、やっている連中はもうやっている。 疑いなし、ブッダブランドはkings from Queens Representin、ニホンジンとして自ら称するのは黒船、その結果、幾つものクラシクスを彼らの足跡の後に残してきた。ブッダブラザーは無敵の3本マイク、批評家受け対コマーシャルな成功、ライミング風の喋り対もう一つ高度な言語遊技……こうした一連の質問を遙か上から葉巻をくゆらして揺さぶろうとしている知恵者だ。さて、ここでは用意されている初のアルバム『病める無限のブッダの世界〜Best Of Best(金字塔)』への招待状としてのEP「Don't Test Da Master」について、個性あるレーベル、エル・ドラドから幾つものプロダクションのリリースも続けてきたDev Large A.K.A. Bobo James、キエルマキュウの半分、CQと交わされた文明的な会話を生中継しよう。
●ブッダ・ブラザーEPについて語る。
Dev Large(以下D):ひさびさに帰ってきて、あなどってのかしゃくは禁物って。やっぱり、達人は達人だった。だから、テストしたらやばいぜって。2年半ぶりかな? でも、その間、止まってた訳じゃないんだけど、キエルマキュウがあったり、エル・ドラドやってたし、Moominもあったし、来年のMoominは凄いぜ。凄い曲作ってる。EPはやっぱり、初のアルバムに対してのインビテーション・カードだね。こういう感じから(アルバムを)どういう風に想像しますか?みたいな。アルバムをじゃあ聞いて楽しんでくれよって。
●タイトル曲にフィーチャーされているLunch Time Speaxとここに今いないN.I.P.P.Sについては?
D:N.I.P.P.Sについては、2000年にはソロのアルバムを出すっていう予定で、いい感じでプリ・プロしてて、エル・ドラドから1枚、ミディアム・レアから1枚って。面白いのが出来そう。ランチに関しては、カッティング(エッジ)から春〜夏前にシングルが出て、2000年内にアルバムが出るって感じで動いてる。
●ニューヨークから帰ってきてブッダブランドとして衝撃を与えてから日本のシーンにも変化があったと思うけど、どう思いますか?
D:これから面白くなるんじゃないの? このアルバムが出て、とか言っとく…さっきCQも言ってたけど、(ヒップホップは)広がってはいるよね。
CQ(以下C):ああ、全体的にね。
D:変わったことといえば、今までヒップホップ(全体を)あげないとって感じでシーンを背負っていた感じはあったけど、2年ぐらい経って、誰かが広げてくれたんで、薄くなって広がったシーンに濃いのを落とすっていう意味合いのアルバム、シングルだね。広がったのはよかったけど、薄く広がった部分絶対あるんで、その隙間をね。
C:で、それ(濃い作品)をコア向けだよっていうのも俺はおかしいと思うんだよね。これ、売れそうな曲だよとか、これは売れそうな曲じゃないけどいい曲だよっていうのも、それを壊さないといけないんじゃない? いい曲だったら売れるの当たり前だしって意味で。
D:俺達が作ってるモノがコア向けに作ってる訳じゃないんだけど、自然と滲み出てきたモノが、コアになっちゃってんのかも知れないけど。
C:自分がかっこいいと思ってることやってるだけでしょう。聞き易いから売れるっていうのもちょっと違うって思うから、そういうのが変わってくれればいいかなって感じで(アルバムが)こういう結果になりましたって感じ。
D:俺達が作ってるモノが普通に売れてかっこいいっていう世界に変えたい。
C:「さんぴんCamp」やってた人がビジネスしてて、それプラス色々な人が出てきているわけじゃない? 変な人も一杯出てきているのかも知れないけど。
●注目しているアーティストはいますか?
D:注目しているアーティスト? いないね。自分自身を注目してるね。
C:絶対そうだよね。
●今回7曲目に世界的に誇れるハード・ロックの偉大なるラウドネスのメンバーとのコラボレーションがありますが?
D:ラウドネス、意外でしょ? 中学の頃からラウドネス好きで、向こう(NY)のローカルなFMとかハード・ロックの番組とかでリクエストしたりしてて。で、ラウドネス、すごいメジャーだったんでかかったんですよ。そういや、どうでもいいけど、昨日、お祖母さん家行ってきたんだけど、それで10年ぐらい見てない棚、タイムカプセルみたいなところ引き出し出したら、ちょうど、10年以上前にエア・チェックしたカセットとか、ダビングしたのが一杯出てきて、ラウドネスだけで、10本以上あった。FM東京でやったラウドネス特集とか、あと、オランダ盤のちょっと違うやつの選曲のカセットを自分で編集したのとか、筋金入りのラウドネス大好き少年だったんだよ。
●アンスラックスとパブリック・エナミーとかコラボレーションしているし、ランDMCの「Rock-box」もギターをフィーチャーしていたけど、ラウドネスとコラボレーションは前から考えていたのですか?
D:ラウドネスとはやりたいなとは思ってたけど。
●どうやって実現したのですか?
D:やった曲はラウドネスの2枚目の、1曲目の、「Theme Of Loudness Pt.2」っていう曲を、「Theme of Buddah Brand」っていうのに変えたくて頼んだんだけど、そしたら高崎さん(ラウドネス)が「なんでこんな曲やってほしいんだ」って興味もってくれて、送ったのを聞いて気に入ってくれて、「じゃあ、やろう」って感じで始まった。
●最初の出会いについて
D:最初の会ったの? Lazyの再結成の、新宿ロフトかな? その打ち上げ行って。樋口サン(ラウドネス)とか、山下サン(ラウドネス)とかもいて、高崎サンも目に見えない波動みたいの発してて、ちょうどそれがあっちゃって、いい感じで始まった。(レコーデイングは)横浜のランドマーク・スタジオってところでやったんだけど、そこじゃないと入らない大きな機材持ってくるからってそこでやったんだ。今、ドラムに凄い興味があるらしくて、気合い入ってる、高崎サン。ギター、早弾きとかで有名な人なんだけど(日本の〜世界のロックに疎い人のために説明してくれている)。
●実際のレコーディングについては?
D:最初、(レコーディングは)ドラムから始まりましたね。まったく同じでいいって言ったんだけど、ライヴでもやってなかった曲らしくて、超マニアックな曲で、じゃあ、アレンジも変えようって言ってる間にかなり(オリジナルとは)変わってきた。コーラスもオリジナルじゃイヴっていう3人組の女の人だったんだけど、違うコーラスの人が来た。高崎サンはやっぱり凄い人。ヒット曲、「In The Mirror」とか「Sexy Woman」とか弾いてもらったんだけど、ギター持った瞬間、やっぱり変わった。
●ジャンルの壁を壊している。
D:ヒップホップとかしか聞いてない人にも、ロックとかにも面白いのあるよって窓口になるといいなって思って。
●話しは変わるけど、最近面白かったことはありますか? 音楽的でも、そうじゃなくても。
D:最近の驚きは、後楽園のレコード市に行ってきたんだよね。で、2時間ほど遅れていっちゃってなかったんだけど、ちょうどその日に、あのSpeedのライヴがあったんだよね。人がすっごいいて、若い子が一杯いて、俺が驚いたのが、気持ち悪い男の子が一杯いて(一同爆笑)、ここ(手で服の一部を指す身振り)とかにSpeedとかモーニング娘の写真とかピンで一杯ぶらさげている男の子が一杯いて、ショルダーバッグとかにアイドルのポスターとか一杯つっこんで歩いている男の子とか一杯いて(一同うなづく)、こういう世界もあるんだなってひさびさに思った。それでびっくりしたのは、かっこいい子が1人もいないんだ(注:Dev Largeが彼らを非難していなことに気がついてほしい。彼はただ驚いているんだ)。
C:やつらん中じゃ、かっこいいんじゃないの?
D:あー、そうだね。
C:ま、いいか。
D:俺は場外馬券場の中の煙草吸うところで煙草吸いながらずっと見てたんだけど、変な人一杯いるな〜って思ったよ(笑)。
●ミスターCQはどうですか? 何か面白かったことはありますか?
C:俺? 面白かったこと? ないよ。
●全然?
C:反省だけなら猿でも出来るって、明日になれば忘れてるって。
●普段何をやっているんですか?
D:CQはハンサムボーイ・モデリング・スクールの会長だから。
C:会長にはなれないでしょ。(突然文脈をずれて)
D:カリスマティックじゃなくて、カリマラティックって感じでいきたいね。
C:僕のマフラーになってくれる人、募集中。
これが彼らが用意してくれたインビテーション・カードの説明だ。アルバムを待て。