DEV LARGE - ON LINE RIDDIMより

『病める無限のブッダの世界〜BEST OF THE BEST (金字塔)』が好評のブッダ・ブランドのデヴ・ラージ。トータルな意味でのプロデューサーを目指す彼にインタビューを行なった。

●はじめて会った時から音楽好き、レコード好きって印象が強いんだけど、いつ頃から音楽に目覚めたの?

Dev Large(以下D):最初お金がなくて、近くのWIZってレコード屋でドーナッツ盤のレコードが1ドル39セントだったんですよ。82年位から 毎週一枚ずつ買うって感じで。

●例えばネタとかブレイク・ビーツとかに意識し始めたのはいつ?

D:向こうにボーイズクラブ(青少年会館)みたいなのがあって、黒人の友達なんかと行って、昔のグランドマスター・フラッシュみたいな格好をした人がレコードの2枚がけでやってたんですよ。何かやってるなーって感じ全然解んなかったんですよ。でその後ジュニア・ハイスクールの一年目ぐらいの時に黒人の友達んちに行ったら、そいつの兄貴が「マジック・ディスコマシーン」を2枚がけしてたんですよ。ランDMCのネタの、″アー、これ俺の好きなグループの音と一緒じゃん″って思って、″これをこうやって2枚行ったり来たりするとあそこの音がでるんだな、凄いな″って思って。よく親がいない時とか酒とか飲んでホームパーティするでしょ、そういう時に呼ばれて回してる人だったんだと思うんだけど、今思うとその人が切っ掛けかもしれない。

●それから意識的にレコードを集め出した訳だ。

D:エクスポージョンっていうどマイナーなレコード屋がマンハッタンにあってカット盤が3ドル99セントとか1ドル99セントとかで売ってて、ジャンルとは解んないけど、でかいアフロの人の写真が写ってたり、黒人5〜6人写ってるレコードを買い始めて、ジャケット買いみたいな、外したのもいっぱいあったんだけど。でも回りに白人の友達もいて、ラットとかモトリークルーとかヘビメタ・ブームだったじゃないですか、80年代前半ぐらいって。両方平行して聴いてたんですよ。でドップリ漬からなかったんですよ。ラジオでヘビメタのチャンネル聴きつつ、こっちでWBLSとかとか聴いてて。自分的にはトップ40とかも聴いてたし。ヘビメタ、トップ40、ブラック・ミュージックを平行してグチャグチャに聴いてましたね。それがあって今のこういう音になってるんでしょうね。

●ニューヨークにいたっていう環境が、音楽に影響あった?

D:あると思う。でも本当の意味で飯代削って、服買わなくて、レコード買いだしたのが、88年以降なんですよ。82年から88年迄向こうで小・中学過ごしたり、日本に戻って高校過ごしてる時期なんでそんなに気合い入れて掘ってる時期じゃなかったんですよ。昔仮面舞踏会ってやってたでしょ? クラブキング系の、あれテレビでもやってたでしょ、15分位。あれでジャクソン・シスターズの「アイ・ビリーブ・イン・ミラクル」がかかってて、クレジットが出て、ウェイヴ渋谷に走ってって、アーバンのコンピ買って、あの辺からもっとおもしろい、熱い魂のある音楽があるんだなと思って買いだしたんですよ。だから88年からグワーって、掘り戻ったんですよね。でも日本でじゃ掘れない、山ほど買いたいから、またニューヨーク戻っちゃったんですよ、高校卒業して。そこからですね、本当探求の旅は。

●その頃はレコード探求の旅をしつつ、トラックも作ってみたいな。

D:最初はDJになりたいと思ってたんですよ。でもどっかでDJにかけさす音を作りたいなっていうのがずーとあって、でファンキー・スライス・スタジオってのがブルックリンにあって、そこに丁稚奉公いくようになって、でちょっとずつ解ってきたんだけど、やっぱ機械をいじくる人じゃないなーっと思って。アイデアはあるけど、俺機械弱いなーって解って…。

●初めて作ったトラックとか覚えてる?

D:覚えてますね。マウンテンの「ロング・レッド」のドラムに、ジェームズ・ブラウンの「ペイ・バック」のなんかのフレーズ入れて、ジューダス・プリーストのギターみたいなのが入ってたのかなー。なんかそういうの作ってましたよ。なんだろノイズの音みたいなトラックで。違うなと思ってて作ってましたよ(笑)。

●で、常にブッダの音を作ってきて、遂にファースト・アルバムが出た訳なんだけど、昔の曲が入ってるにしろ、約30曲。全曲プロデュースしてる訳じゃない。今回トラックを作る上で、意識したことはある?

D:いろんな今の状況を言葉を入れずに音的に表現したいなってコンセプトがあって。ラップ入れずに伝わる物を頭で思い描いて、それにしっくりくる様な音を掘ろうみたいな感じで掘ってった。そこで凄い必要だったのが土井君で、土井さんが居たからこそ俺のめちゃくちゃな頭で考えてた音が表現できたって意味で彼には感謝って感じなんですけど。

●エンジニアである土井君とタッグを組んでやりだしてから、自分のやりたい理想像に近づいた?

D:アビリティっていうかマヌーバーっていうか一つ一つの引き出しの技能が強化されたっていうか、土井さん自体にインプットもあるから凄いから、アウトプットが増えたってのもあるんですけど、それを学ばさせて貰ったんで。勝手に第5のメンバーと思ってるくらい。スタジオでニップスとめちゃくちゃな喧嘩して帰っちゃう日とか、もの凄く上手くいっちゃって今日最高だったねっていう瞬間とか喜怒哀楽が共にできたって感じで、無理して土井君付きあってくれたかもしれないけど。

●ラップが入ってる曲は勿論、アルバム中のインスト曲が非常に効果的に入っている様に感じたんだけど。

D:ヒップホップって枠で括られないアルバムを作りたかったんですよ。親でも聴ける物を作りたいなっていうのがあって、若い人が聴くヒップホップって決め付けられちゃってる物があるでしょ。若いうちしかこういうリリック書けないよねっていう人が多いんですよ、ブッダ見て。でもそういう人達にもリリックも勿論聴いて欲しいけど、音の面でもっと入り易いアプローチで、素直にやっぱいいじゃん、俺でも聴けるよっていう言葉が聴きたかったんですよ。本当ゆりかごから墓場迄って感じで。老若男女問わず、誰でも聴ける様なそれでいて普通の歌謡曲にはない異質なギラギラした音なんだみたいな。

●エルドラド、ブッダそしてソロとして今後の動きは?

D:エルドラドの動きは勿論命かけて売りたいなーって思うアーティストがいたら呼んで、その人を行けるとこまでケツ持ちたいんですけど、今考えてるのは、とりあえず第一段階として、今スイケン、ランチやってて、メジャーに繋がったんで、彼等を同じ土俵の立てるとこまで連れてきたいなっていうのが凄いあるんですよね。対レーベルって所でブッダと同じレベルまで連れてこれる様にしたいなっていうのはあるんですよ。エルドラドで縛っとこうていうのは無くて、他の所行きたければ行けばいいし、エルドラド卒業して、凄い人になったって絵になればかっこいいと思うんで。

自分的にはメジャーでやるソロに関しては、覚悟はしてるし、やんなきゃいけない事、いろんな意味で挑戦しなきゃいけないのは解ってるんですけど、覚悟したうえで、ブッダよりも大きいキャパシティーに対して打ち出す様な音楽、ダンスミュージックを追及していく物にしていきたいんですよ。ラップに関しての視点でいうと、出来上がった後にここのリリックだめだねーとか。例えば「ポルノ・オールスターズ」とかリリックがだめで、出せなかったんですよ。「イルソン」が入った理由は、「ポルノ・オールスターズ」入れなかったんで入れたんですよ。そういうのを自分でインディーズでCD切って、信用できる場所から発信できる方向にして、好きな時に録って、好きな時に出せる。そんな儲かんなくていいんで全然。アーティストとして何か出したい、でもそれは何々だから出せないっていう制限がないフォーマットでやりたい。ブッタに関してもそうなんですけど、ブッダ、デヴ・ラージのラップのソロは多分アナログ・メインで切って、溜ったら自主でCD切ろうかなーとか考えてんですけど。方法論的にはハイ・スタンダードですね。

●プロデューサーとしてこれから目指していくものとかありますか?

D:例えば1アーティストそのまま貰って、そのアーティストが何やりたいかっていうのを知って、全体をプロデュースする様な事をやりたいんですよ。もっと広い層にアプローチする、いいミュージックなんだ、俺が作ってるのは、みたいな方向で行きたいんですよね。でも基本的に尊敬できるとまで言わなくていいけど、自分が一緒に仕事してこの人は凄いなと思える人とか、自分に何か教えてくれる人とはずっと仕事していきたいし、今迄積み上げたピラミッドがそうだった様に、そこは譲りたくないなって感じで、会った時に共鳴できたり、クリエイティヴな事ができるなって、野生の感みたいなの感じる瞬間ありますよね。そういうの凄く大切にしてるんですよね。あと、本当窓口だけは広くしておきたいんですよね。常に新しいもの作んなきゃいけないし、常に影響受けたいんで。セルアウトしたとかクロスオーバーしてるとか、ケツの穴の小さい考え方で捉えずに、それはいい音楽を一人でも多くの人に届けたいからやってるって意味で、自分の考えてる夢に向かって、チャレンジとして捉えてるんだって、解って貰えたら嬉しいんですけど。常に守りじゃなくて攻撃で行きたいんで。そこでもし血が混ざっても、ニュータイプになって凄い物が作れるって解ってるんだったら、俺はやりたいんですよね。血は守んなきゃって意識も解るんですけど。限定されたくないって感じで。ずーと広げて行きたい、続けて行きたいって感じなんで。良くも悪くも何らかの形で人に影響するものを作りたいって感じなんで。駄目だったねって言われたら次に繋がるだろうし、スゲエ良かったよって言われたらそれがエネルギーになって吸収されるだろうし。中間色がやだなって感じなんですよね。それを好む人もありですけど、自分はどっちか、オール・オア・ナッシングがいいなって感じで。最終的には、でかい倉庫みたいなのを借りて出版とか制作とか宣伝とか、広告とか全部できて、マーチャンダイズもやれてデザインの部屋もあって、カメラマンもいて、トータルな会社が作れるといいなと思うんですけれど。そこを発信地にして全部ができて、流通も全部持ってる様な。そういう所に行くために自分がいろんな事をやって、この人なら仕事したいなっていう熱い人達を集めてって、どっかに頼らずに、時給自足ですべてが行われる様な物を近いうちに作りたいと思ってるんですよ。

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