餓鬼レンジャー - UPPER JAM/ON LINE RIDDIMより

メジャー・デビュー・シングル「火ノ粉ヲ散ラス昇龍」の衝撃も束の間、遂に初フル・アルバム『Upper Jam』が到着!! 当然、期待はしてたんだけど、こりゃまたトンでもない熱量じゃねえの!! フロム火ノ国、餓鬼レンジャー、本誌初登場ナリ!!

P・ヴァインからのデビュー・ミニ・アルバム『リップ・サービス』(98年)を聴いた時から、オレは餓鬼レンジャーにはメジャーな……と言うか、普段ヒップホップを聴いてないような人達にまで向けた幅広い展開こそ相応しいんじゃないかって思ってた。ファンキーにロックにハジける独自のサウンド感覚といい、等身大で押し付けがましさを感じさせないリリックといい、そこいら中から噴出する目も眩む音楽的才能といい…。

毒とエロに満ちた笑いのめすかのような強烈なユーモアやどこかオルタナ臭漂うセンス(ポチョムキン・シンに顕著)も含め、九州は熊本の地で築き上げられた独自の魅力を持つ餓鬼流ヒップホップに、オレはその辺のフツーのオニーチャン&オネーチャンをも同じ目線の高さでロックする可能性を感じたのだな。

で、何を言いたいのかっつーと、つまり、今回メデたくメジャーからリリースされることとなった初フル・アルバム『Upper Jam』に対するオレの期待はデカかったぞ、と。適格なポジションを得た餓鬼レンジャーの更なる成長が楽しみだったぞ、と。まあそういうことなんですが、さすがは餓鬼! 彼らはそんな勝手な期待をも圧倒するフルボディな力作(全21曲!)を作り上げちまった!!

さて、そんなワケでインタヴュー開始。なお、取材はポチョムキンが直前に岡本太郎記念館でしこたま購入してきた太郎グッズが見守る中進行致しました。

●初アルバムだし、メジャーからのリリースだしってことで何か変化はあった? 本質的には何も変わってなさそうだけど…。

ヨシ(以下Y):大人になったかもしれない。同じエロい曲をやるにしても、昔なら「何回でもデキるで!」って勢いやったのが今は「1回でカンベン(泣)」ってなったし(笑)。

ポチョムキン・シン(以下P):単純にウマくなったかな。ラップもスピード的なことも含めてコナせるようになれたし。だからまあ成長したと言えば成長したのかも…急激に(笑)。やる気を出した時期から(笑)。

●やる気出したのはいつ?

P:メジャーが決まってからかなあ。変わらないって言えば変わらないんですけど、やっぱ欲が出て来るじゃないですか、人間は(笑)。「ひょっとしたら結構儲かるんじゃねえか?」とか(笑)。オレは歌舞伎町の個室ビデオでバイトしてたんですけど、客の精子清掃にもいい加減嫌気がさしてたから(笑)、それ辞められたのも単純に嬉しかった。……とにかくあの時「やらなきゃ!」と思ったのは確かですね。

Y:変わってないんだけどね、基本的には。オレらは同じように頑張ってきただけで。ただ、時代と言うか周りがオレらの音楽の楽しみ方に気付いてくれたのかなとは思う。だから今は会社ともいい具合にリンクしてる。

P:今はまだ「オモシれえな! 走れ!」って感じだけど。でも、それで満足行くモン出来てるし…。

Y:けど、やっぱ昔は何も考えてなかったなあ。パチンコばっかやってて。ホントにダメ人間だった(笑)。

P:オレも最近まで何も考えてなかったよ(笑)。漠然としたヴィジョンはあったにしても、それに対してアクションしてるかって言えばそうでもなかったし…。だから周りの環境とかには凄く感謝してる。

Y:よくヒップホップに救われたって話があるけど、オレもホントにそうなんですよ。オレはホントにダメな所から這い上がって来たから。だから……感謝してる。やっぱ、(スロットで)大花火うって稼ぐ3万円とライヴで見せるモノ見せて届けたいモノ届けてもらう3万円じゃ価値が全然違うし…。

●2人は色んな面で対照的だよね。

Y:オレはキックとスネアがしっかりしてると言うか、いわゆる昔からあるヒップホップのビートが好きだったりして、フロウもストレートな感じだけど、シンは変化球投げるタイプで、音楽の好みも全然違うし…。

●昔、「フツーにデジタル・ロックでラップしてますよ」とか言ってたよな。

P:うん。

Y:そういう対照的な2人が一緒にやることでオレらにしか出せないグルーヴが生まれてるんやないかな…って、アルバム作り終わって感じました(笑)。

●餓鬼は異質だと言われることが多いと思うんだけど、その辺に関しては?

Y:オレらは「え? 異質なんですか?」って感じなんですけどね(笑)。至ってピュアにやってるだけやから。

●ワカる。でもさ、やっぱ特にポチョは異質……だよなあ。フロウも、クダラないコト言わせたら天下一品な感じにしても(笑)。

P:オレ、「結局何にも言ってないよね」とか「お前、テキトーだろ?」とか言われると凄く嬉しくなってしまうの(笑)。

●今回プロデュースしてるHigh Switch a.k.a. HiroとGreen Peeace a.k.a. Nobbについて教えてもらえる?

Y:2人とも、シンが東京に行ってる時(ポチョはソロ・ラッパー及び東雲レコーズ代表としてしばらく東京を拠点に活動していた)、オレが地元で仲良くなって普通に遊んでた連中なんですど、作る音もカッコエエし、そんな時にメジャーの話も来て…。全てがタイミング良くリンクしたんですよね。今はオレもこの2人も福岡在住なんですけど、これからシンも福岡に住むし、4人が同じ街に住んでもっとやり易くなると思います。

P:最終的には地元でウマく回せるようになればいいなって考えてるんですけど。

あくまで自然体。九州のシーンうんぬんに関しても、「オレらが刺激になってみんなが動けばいいかな」と、特に大袈裟に意識してる様子はない。だが、この″火ノ粉ヲ散ラス昇龍″が巻き起こす壮絶な突風は、確実になぎ倒すモノをなぎ倒し、巻き込むモノを巻き込むだろう。『Upper Jam』にはそれだけのパワーと楽しさが詰まってる。これからが増々楽しみだ。

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