春一番の衝撃と言っても過言ではないシングル「Front Act CD」から2ヶ月。やっとその序章の答えであるセカンド・アルバム『S.O.S.』を完成したTha Blue Harb。本作のバック・グラウンドを知るべく、札幌にいるBoss The MCにRing Ring Ring。
●ブラック・ミュージックとか黒人文化に触れたのは大きな出来事でしたか?
Boss The MC(以下B):僕はHip Hopが最初だったんで、その後にカーティス・メイフィールドとか、黒いところにいったんで。最初Hip Hopに出会ったのも勿論ショッキングだったけど、後になってカーティスとかをネタとかじゃなくて、1曲1曲、曲として聞くようになってから、そのショックのまま今も聞き続けている感じですね。
●なぜ最初にブラック・ミュージックについて聞いたかというと、日本でHip Hopをやるということを考え出すと、なかなか大変なことですよね? 頭で考えちゃうし、更に色々なことを考え出しちゃうし。いわゆるアフロ・アメリカンの人々の作り出したスタイルの真似だけになってしまう危険性もありますよね?
B:ええ。
●正解はそれぞれのアーティストや個人によって違うけれど、それぞれが試行錯誤していくしかない。それをTha Blue Herbは巧みにすり抜けて、音楽と言葉で聞き手を感動させることに成功していると思います。
B:ブラック・ミュージックも聞くけど、またそれ以外の音楽も沢山聞くし、そん中で、好きなものを(選んでいく)。ブラック・ミュージックが好きでカーティス聞く訳じゃないですからね。カーティスが好きで聞いている訳だし、ダニー・ハサウェイが好きで彼の音楽を聞いている訳だから、然程の括りはないですよね。でも、やっぱりURっていうデトロイトの奴ら聞きに行ったけど、テクノなんだけど、やっぱり、暗黒っていうか、黒さを感じたから。それもブラック・ミュージックなのかい?みたいな事になってくるから。基本的に、黒くて、官能的で、むせかえるようなやつが俺好きなんですよね。だから、そうなってくると、俺、ブラック・ミュージックを聞くのかな。
●Tha Blue Herbって音楽的ですよね?
B:Hip Hopの知り合いあんまりいないし、Hip Hopもあんまり今は聞かないから。むしろ(他の)音楽聞くので、自然にそうなるんだと思いますよ。Hip Hopしか聞いていなかった時は、Hip Hopのノリしか知らなかったけども、今はHip Hop以外の音楽を聞いて、Hip Hopを作るっていう生活だから。(音楽的っていうのは)自然に出ているだけだと思います。
●今の流れとか、細かい流行とかは気にならないですか?
B:(はっきりと)全くならないですね。はい。1回も聞いたことないですよ。日本語RAPっていうものは。有名と言われている人たちは。
●じゃあ、最初RAPを始めようとした時も、日本語RAPを聞いて始めた訳じゃないのですか?
B:みんなが言う様に(Microphone)Pagerとかでズガンってやられたっていうのはないですね。昔勿論聞いた事はあるけれど…。
●それが自分が始める直接の動機になったという事は…?
B:全くないですね。影響を受けたことは1回もない。それだけは断言出来る。
●逆に音楽とかよりも本から影響を受けたりするんですか?
B:本はだけどまぁ、音楽としてとか、ラッパーとしてというより、普通の人間として、自分自身のために読む。音楽もそう。ぶっちゃけた話、同業者の音楽聞いたってしょうがないじゃないですか? 自分より優れているか、劣っているかしか興味ないから。逆に言えば。だって、自分が一番だと思ってやっている訳だから。僕の方の気持ちも開いて聞けないですよね。俺の方が絶対スゲエと思って聞いちゃうと。それは音楽聞く気持ちとは違う。(音楽は)ただハイになるために聞く訳であって。そう、本とかもあんまりラッパーとして知識を溜めるために読むというか、普通に夢中になって読んじゃう。
●旅は重要ですか?
B:う〜ん。やっぱり、旅は重要だと思う。多分旅に出なかったら、俺はそのまま日本の消費されるペースに巻き込まれて、そのまま普通のラッパーになっていたと思う。
●「Sell Our Soul」はある意味ネガティヴにも聞こえるタイトルですけど?
B:僕としては100%ポジティヴですけどね。客に商品売るんだから。レコ社に“Sell Our Soul”していない人間が、客だけに“Sell Our Soul”するというのは、一番ダイレクトで、本当に音楽の純粋な形だと思いますよ。俺はね。