今や日本のダンスホール・シーンに於ては説明不要のMighty JamRock。先行マキシ・シングル「Triple Loaded」で見せつけたファースト・アルバム以上の熱気を更にヒート・アップさせたセカンド・アルバム『3 The Hardway II』が早くも完成。彼らに限界などない!
ヒップホップの未来が今問われている。誰によって? 多くの最前線に立つ勇敢な冒険者たちの手によって。そして、DJ Krushは、そのなかの先頭に立つ者であることが彼の最新作である『深層』で明らかにされた。
DJ Krushの歴史は日本のヒップホップの苦闘の歴史とその末に勝ち取った栄光とほぼ重なるはずである。彼がインタヴューでしばしば語っているように当時(80年代のことだ)、日本でもっとも優れたヒップホップ・クルーであった彼のクラッシュ・ポッセはレコード会社にまったく理解されず、ヒップホップではないことをやることを要求されたという。
83年に映画『ワイルド・スタイル』が多くの映画のキャストと同時に日本に上陸を果たし、B-Boy Parkを主宰しているCrazy-Aを初めとして多くの者がこの映画に影響された(僕は自分のことをBボーイだとは言わないが、この映画に大きく影響を受け、80年代前半、自分にとって音楽とは100%ヒップホップを意味したのである)。
DJ Krushも例外ではなかった。彼は、何もないところから始めた。その頃はターン・テーブルでさえ、何をどう使えば好いのか判らなかった時代だった。ミキサーもなかった。そういう時代が存在したのである!
DJ Krushはそうしたオールド・スクールへの尊敬の念を忘れないながらも、この国でヒップホップをやっていくということ、そしてそれをこの国の外側までにアピールすることまでに成功した数少ない例である。そのひとつの理由は彼の優れたターン・テーブル・テクニックであることは間違いない。彼のライヴ・プレイを見たことが(聞いたことが)ある者なら、すぐに納得するだろう。それは“神技”という言葉を使いたくなるようなものだ。彼より素早く手が動くDJはいるだろう。しかし、DJ Krushが特別なのは、彼のプレイがオリジナルであり、ユニークであり、更にはっきり言ってしまえば、日本的なミニマルな美学さえも感じさせるからである。それは彼を海外で彼を認知させる理由の一つだったのではないかと僕は想像している。
必要なサウンドしか入っていないという点では、今回の『深層』もこれまでのアルバムと同様である。しかし、ミニマルなサウンドかと言われれば違うだろう。アンチコン、アンチ・ポップ・コンソーシャン、スライ&ロビーなどをゲストに迎えたこのアルバムは、これまでになく多くの聴衆の前に扉が開かれているような出来映えだ。特にアンジェリーナ・エスパーザをゲストに迎えたトラックを聞いてみてほしい。もし、あなたが DJ Krushの初期の作品しか聞いていない人だったら尚更だ。ここでは禁欲的な彼のスタイルとポップがぎりぎりのところでせめぎあっているのだ!
『深層』はこれまでのDJ Krushのアルバムの歴史でも特筆すべきものだ。聞くべし。