音楽にとって響きってのは重要だ。いや、重要なんてモンじゃないな。そもそも音楽は響き/空気の振動なんだから。野生なリディム読者に今さらこんなコトを言うのも気が引けるけどさ。基本的にヒップホップやレゲエはデカい音でその響きを身体で浴びるように感じる音楽なワケだし。ま、文章とか書いてるとどうしても理屈が先に来ちまいがちなんで、自分の認識も含めて再確認しときたかったんですよ、ハイ。
で、何でそんなコトを最初に書いたかというと、本稿の主人公=Deli(言うまでもなく、ニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンドの一員でもある)の最大の魅力は正に響きそのものにあるとオレは感じてるからだ。何よりもその声の響き自体の壮絶なカッコ良さとインパクトにヤられちまってるからだ。もちろん、日本のヒップホップ界にも魅力的な響きの声を持つラッパーは多い。Twigyなんかは初めからそういう部分に意識的/感覚的に取り組んで大きな成果を上げてきた先駆者なんじゃないかと思う。
だが、Deliの声が持つ響きは、その中にあっても圧倒的な破壊力を誇る驚異のシロモノなのだ。未体験ゾーンへの水先案内人なのだ。凄いのだ。前にオレはその感覚をピッキヌーに喩えた。ピッキヌーってのはタイ産のムチャクチャ辛い小型の唐辛子なんだが、料理に使うと味の天井がグワン!!と高くなり、その分他の味の居場所や自由度が増して味全体の輪郭もハッキリクッキリしてそれまで見えなかったモンまで見えてくる。そして、ヒトはそれを食べるとハイになる。ヤミツキになる。スパイス・フリークのオレ的にはDeliは正にピッキヌーなのだ。
そんなDeliが遂にメジャーから初のフル・アルバム『Delta Express Like Illusion』をリリースする。もう既に相当ヤミツキになっちゃってるオレが飛びつかないワキャないだろう。んで、コレがまたRealityからリリースされた諸作や先にリリースされたミニ・アルバム『口車』以上に常習性の高いヤバ過ぎる極上のブツなのだ。この男はまたトンでもないモノをデリヴァリーしてくれた。驚異のイリュージョニストDeliの世界に身体がグググッと引きずり込まれる「Delta Express Pt.1」! (Mikrisもスゲえイイ)アガってアガってドコまで行っちゃうの?って感じの激アガりチューン「Delta Express Pt.3」! Gore-Tex、Butcher、Booら腹減り過ぎ3人衆をフィーチャーした完全躁状態な「パックマンパニック(いただきマフィア)」! ブットビ異能集団Think TankのBabaとの最高にドープなコラボ曲「You Try離脱」!
もちろん、あの「Pass Da Popcorn」(フィーチャリングはGore-Tex、Nipps、K-Bomb。アブな過ぎ! 因みにオリジナルはK-Bombのテープ・アルバム『555』収録)を始め、『口車』に収録されていたアレやコレもガッツリ入ってる(しかもヴァージョンが違ったりしてる)。そして余韻を残して最後を締め括る感動的な「4.M.O.Y.」(S-Wordのアルバムにも「For Minuites」のタイトルで収録。これまたヴァージョンが微妙に違う)……。ま、響きを最大の魅力とするDeliのアルバムだけに、そのカッコ良さを言葉で説明するのは正直難しい。これ読んで興味持ったら是非実際に体感してくれ。未体験のヤバいアガりを完全保証するぜ。